管理監督者問題の本質!

管理監督者とは、労働基準法41条2号に規定されている「事業の種類にかかわらず、監督若しくは管理の地位にある者」のことを指しています。(管理監督者とは俗称であって、正確には「監督若しくは管理の地位にある者」と言います。)

労働基準法41条2号に該当する監督若しくは管理の地位にある者であれば、労働基準法の労働時間、休憩、休日の規定の適用を受けません。

つまり、時間外労働をしても、休日出勤をしても、その規定が適用になりませんから、いわゆる残業代の支払をする必要がないということになります。

従前より、多くの企業では、こうした考え方を用いて、例えば課長職以上であれば、残業代を支給しないという制度を設けていた経緯があり、現在においても、そのような取扱いをしている企業は相当数あると思います。

しかし、会社における組織付けとしての監督若しくは管理の地位にある者と、労働基準法41条2号に該当する監督若しくは管理の地位にある者とが、必ず一致するかというと、そうではありません。

つまり、誰をどのような役職に任命するかは、全くもって会社の自由ですから、会社の組織付け上、課長職に任命したからといって、それが労働基準法上の監督若しくは管理の地位にある者とイコールになって、割増賃金の支払いを免れるという、単純な構造ではないのです。

このような、割増賃金の支払を免れるための隠れ蓑として、管理監督者という考え方が用いられると、一般社員以上に、長時間労働に拍車をかけることになりかねず、それにより、過労死、あるいは精神障害に罹患する管理職が増加していくことになってしまいます。

労働基準法41条2号の監督若しくは管理の地位にある者に該当するかどうかは、裁判にでもならない限り、それを判断することは困難ですが、仮に労働基準法41条2号の監督若しくは管理の地位にある者に該当する場合であっても、割増賃金の支払を要しないだけであって、健康問題を無視することはできません。

いわゆる管理監督者問題も、その本質は、健康問題なのです。

平成11年9月14日に「過重労働による精神障害・自殺の労災認定基準に関する労働省通達」というものが出されました。

そして、これを受けて労働者の精神的健康を守るために、平成12年頃から労働行政が動き出します。

是正勧告は、法違反にしか発することはできないのですが、監督若しくは管理の地位にある者であれば、労働時間、休憩、休日に関する規定が適用除外ですので、割増賃金の支払をしていなくても、法違反にはなりません。

したがって、法定時間外・法定休日割増賃金の未払について是正勧告を発することで、間接的に長時間労働を抑制するという手法を取ることができません。

しかし、監督若しくは管理の地位にある者と言えども、深夜労働については、その適用を除外されていません。

そこで、「労働基準法41条2号に該当する管理監督者に深夜割増賃金を支払っていないこと」という内容の是正勧告を発することで、少なくとも深夜時間帯に及ぶ長時間労働を抑制し、監督若しくは管理の地位にある者の健康を守ろうとしたのです。

もちろん、裁判により、監督若しくは管理の地位にある者に該当しなかった場合には、健康問題に加えて、割増賃金の未払問題にも繋がっていくことになりますが、事の本質は、やはり労働者の健康問題にあるということになります。

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