申告監督への対応とは

一方、申告監督の場合は、定期監督と異なり申告者がいます。

監督官は、申告を受けた場合、必ず調査をする義務はありませんが、調査をしないと、申告者から「税金の無駄遣いだ」などと言われかねませんから、基本的には調査をすることになります。

申告者は、通常、不当解雇や残業代の未払いなど、ある特定の部分についての是正を求めようとして、労基署に申告します。

したがって、監督官も調査の結果を詳細に申告者に伝える必要がありますから、定期監督に比べれば、監督官の裁量は小さく、その対応は厳しくなると言えるでしょう。

さて、申告監督の場合は、誰が申告したのかが、非常に気になるところです。聞き出して、首でも絞めてやりたくなりますね。

しかし、監督官は、申告者の氏名を教えようとしません。

それは、申告者の氏名を公表することで、申告者が会社から不利益な取り扱いを受ける可能性が高くなるからです。

一応、労働基準法104条2項には、

「使用者は、前項の申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない。」

とあります。

しかし、実際には、不利益な取り扱いを受けることになるのは避けられないでしょう。

したがって、監督官は在職者からの申告の場合は、申告者の氏名を教えてくれないのです。

ただし、実際には申告の多くが退職者によるもので、その場合には、本人が不利益な取り扱いを受けることが無いため、氏名を公表してくれることも多々あります。

そして、こうした退職者が労基署に申告する事例は、割増賃金を含めた未払い賃金の請求がほとんどです。

このように、退職者が申告者であって、申告内容が割増賃金等の未払いであれば、会社の対応は単純明快です。

在職者に波及しないように、早々に当事者間で解決することが絶対に得策ですから、さっさと金銭解決するだけです。

イメージとしては、退職者からの主張が100万円で、会社の調査の結果が50万円だったとしても、70~80万程度であれば、潔く和解してしまうことです。

なぜなら、会社が自らの主張を曲げず、申告者が裁判に訴えた場合、仮に会社が50万円の根拠を立証したとしても、労基法114条により「付加金」の支払を命じられる可能性があるからです。

そうなると、付加金は同額の50万円となりますから、結果として100万円の支払が命じられることになります。

これでは、時間と労力の無駄遣いですね。退職者による申告の場合であれば、本人に会って早々に和解すべきでしょう。

このような問題を解決するにあたっては、感情論が先に立つのは理解できますが、損得勘定で判断することを心掛けてください。

また、監督官に対して、「会社は和解のために本人と話し合いの場を持ちたい」という意思を伝えれば、監督官が仲立ちしてくれるケースも、実際に多いものです。

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