36協定のチェックポイント

これらのことを踏まえて、36協定における限度時間に関するチェックポイントをまとめると、以下の通りになります。

  1. 実際の法定時間外労働が、限度時間内に収まっているかどうか。
  2. 限度時間を超える特別条項を定めた場合には、特別条項における限度時間内に収まっているかどうか。
  3. 特別条項を適用させる場合には、協定された労使間の手続きが実行されているかどうか。

上記3つのポイントの中で、特に注意を要するのは、3です。

1、及び2については、結果として、法定時間外労働時間数が一定の範囲内に収まっているかどうかという結果論ですので、監督官が調査に入った段階では、すでにどうしようもありません。

しかし、3については、法定時間外労働時間数が、結果として一定範囲内に収まっていなかったとしても、その結果にたどり着くまでのプロセスの問題になります。

この点は、会社が時間外労働の短縮、あるいは長時間労働に対する問題意識を持って、どの程度取り組んでいるかという姿勢が表れるところであると言うことが出来るのではないかと思います。

すなわち、長時間労働というものが、社会問題になってから久しいですが、この長時間労働というものが、従業員の健康障害を発生させる原因となっていることが、医学的にも明らかになっており、また、長時間労働が原因となって、過労死や精神障害の発症に伴う自殺等が多発している現代においては、企業の安全配慮義務という観点からも、その予防に取り組んでいくことは、企業の存続にかかわってくる重大な問題になっていると言えます。

したがって、長時間労働の問題については、割増賃金の未払いの問題ではなく、従業員の健康障害の防止という観点で捉える必要があり、本来の監督官の監督の目的は、そこにあるわけです。

よって、3については、法定時間外労働時間数が、結果として一定範囲内に収まらなかったとしても、その過程の中で、従業員の直近6ヶ月程度の労働時間数や、当月の途中経過等をチェックしているかどうか、また、延長する場合にも労使協議等の手続きを行っているかどうかというような実態は、従業員の健康障害防止という観点から見れば、監督官はとても重要視しているという認識を持つことが必要だと思います。

そして、事後的に、法定時間外労働時間数が、一定範囲を超えた場合であれば、医師への面談等を積極的に促したりして、健康障害の予防に努めることも、企業に求められた姿勢なのだろうと思います。

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