間違いやすい割増賃金
さて、労働時間が判明した後は、割増賃金の算出となるわけですが、ここがかなりの会社で、故意でないまでも、間違えてしまって指摘を受ける部分でもあります。
労働基準法では、1週40時間、1日8時間(休憩時間を除く)を超え、または週1日の法定休日に働かせる場合は、36協定を締結し、労基署へ届け出ること、そして割増賃金を支払うことが定められています。
法定労働時間を超えた労働には2割5分以上の割増賃金、法定休日の労働には3割5分以上の割増賃金が必要です。
さらに、午後10時から午前5時までの労働(深夜労働)には2割5分以上の割増賃金が必要になります。(時間外労働、または休日労働に深夜労働が重なった場合の割増賃金は、それぞれ5割以上、6割以上の割増になります。)
前日の労働が継続して翌日まで及んだ場合には、翌日の所定労働時間の始業時刻までの分は、前日の超過勤務時間として取り扱われます(S28.3.20 基発第136号)。
また、法定休日に時間外労働をしても、3割5分以上とされています。
仮に、「労使の合意があるので支払わない」という理由があったとしても、労働基準法37条は強行規定ですので、無効となります。(S24.1.10 基収第68号)
さて、後述しますが、割増賃金の時間単価を計算するときは、定期的に決まって支払われるすべての賃金のうちから、一定の手当等を除外することが可能です。
こうして、定期的に決まって支払われるすべての賃金のうちから、一定の手当等を除外した賃金を、日給制の場合は1日の所定労働時間数で割り、月給制の場合は月の所定労働時間の合計(月によって合計時間数が異なる場合は、1年間における1ヶ月当たりの平均時間数)で割って算出します。
所定労働時間とは、各事業場の労働契約や就業規則などで定められた労働時間のことを言います。
このように算出された時間単価に割増率を乗じて、実際の法定時間外、法定休日、深夜労働時間数を乗じて、割増賃金を算出することになります。
それでは、次項から具体的にポイントを見ていきましょう。