管理監督者問題の労基署への対応

監督官は、法違反があれば、是正勧告を発することができますが、管理監督者の問題については、その基準が何とも判然としないこともあり、明確に法違反と言い切ることはできません。

労働基準法41条2号に該当しないということになれば、労働基準法37条の割増賃金の支払に違反するということになります。

しかし、労働基準法は、労働刑法です

刑法は、罪刑法定主義ですから、厳格解釈が求められ、類推適用は許されません。

労働基準法も刑法ですから、使用者が罰せられる範囲が広がるような拡大解釈は、絶対に許されません。

したがって、労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」の解釈についても、厳格に解釈する必要があります。

ですから、民事裁判のように裁判官が合目的的に判断することも許されませんので、監督官が法違反であるとして、是正勧告書を発することは、まず有り得ません。

そのため、監督官は、是正勧告書ではなく、指導票という書式に、記載することで、その改善を促します。

例えば、「貴社は、○○長を、労働基準法41条2号の「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するとして、労働時間、休憩、休日等の規定について適用除外としていますが、『経営者と一体的な立場』であるかどうかが判然としません。したがって、貴社における管理職の範囲について見直しを図り、法41条2号が求める『監督若しくは管理の地位にある者』に該当しないと判断された場合には、同法に定める労働時間、休憩、休日等の規定を適用除外せず、同法に定める所要の措置を講ずること。」というような内容になります。

こうした指導票に対する会社の報告としては、まず、「当社の管理職は、労働基準法41条2号の監督若しくは管理の地位にある者に該当すると考えます。」とします。

ここでは、管理監督者という言葉ではなく、「監督若しくは管理の地位にある者」という文言を用います。

また、「見直しを図った結果、『監督若しくは管理の地位にある者』に該当しないと判断しました。」などという報告は、自白しているも同然で、下手をすれば、割増賃金の遡及払いの勧告を受ける可能性もありますから、絶対にしてはいけません。

そして、「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するとした上で、「貴官よりご指摘を頂いておりますので、管理職の権限や勤務態様については、今後も更に検討し、吟味して参ります。」と、補足しておくことです。

監督者ではなく、管理の地位にある者についての指摘がなされていた場合には、さらに、「一部の人には、企画業務型裁量労働制の導入についても検討していく予定です。」と追記します。

ただし、このような内容で、一時的な報告をしたとしても、実際に自身の会社の管理職が「監督若しくは管理の地位にある者」に該当するかどうか見直しを図った結果、明らかに該当しそうもないという判断に至った場合には、役職手当の固定残業手当化を図る等、将来に向かって速やかに対応策を講じるべきであることは言うまでもありません。

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